2019年9月23日、英旅行大手・トーマスクックが破産しました。
これにより、同社のツアーで国外を旅行していた15万人以上が帰国難民となりました。
帰国難民は英政府とCAA(英国民間航空国)が協力して全員無料で帰国できるとのことですが、恐ろしい話ですね。
創業178年の英旅行代理店トーマス・クック・グループは23日、ロンドンの裁判所に破産を申請した。追加の資金調達交渉が合意に達しなかったため。英民間航空局(CAA)は、同社が「直ちに営業を停止した」と発表した。トーマス・クック・グループは、「近代ツーリズムの祖」とも言われる実業家トーマス・クックが19世紀に創業した老舗旅行代理店が母体だった。
出典:BBC
旅行会社・倒産・帰国難民・・・どっかで聞いたことありませんか?
そう、「てるみくらぶ」です。
てるみくらぶは倒産により約2500人の帰国難民を生み出しました。
今年3月、東京地方裁判所へ破産を申請し、手続中の旅行会社「てるみくらぶ」(本社:東京都渋谷区)が虚偽の書類を銀行に提出して約2億円の融資をだまし取っていたとして警視庁捜査2課が同社の山田千賀子社長などを11月、詐欺などの容疑で逮捕しました。負債総額約151億円と旅行業として戦後4位の大型倒産になった出来事へ遂に司直の手が及んだのです。
出典:yahooニュース
今回はトーマスクック・てるみくらぶの倒産から以下の3つを解説します。
- 旅行代理店が置かれている現状
- なぜ帰国難民になるのか
- 旅行代理店を経由する危うさ
この記事を読めば、安心安全だと思われる「旅行代理店のツアー旅行」の危うさが分かるでしょう。
そして、信頼できる旅行代理店か、航空会社から航空券を購入しようと思えるはず。
それでは、解説します。
トーマスクックの破産から見る、旅行代理店が置かれている現状
旅行代理店が置かれている現状を以下の項目で紹介します。
- トーマスクック破産の原因
- てるみくらぶ破産の原因
- 旅行代理店は自転車操業?
解説していきます。
トーマスクック破産の原因
トーマスクックの破産の大きな原因はズバリ、以下の3つです。
- インターネットの普及
- 旅行スタイルの変化
- イギリスのEU離脱
1871年に創業されたトーマスクックは世界最古の旅行代理店で、ホテルや出版業など様々な業界を取り込み巨大化していきました。
しかし近年、インターネットを利用した低価格の旅行代理店が台頭。
巨大化のため莫大な固定費がかかるトーマスクックは、値段では太刀打ちできなくなり業績が悪化しました。
そして、近年の旅行スタイルの変化も倒産の一因です。
今は民泊やLCCなどを利用して、飛行機・ホテル・現地の遊びなどをそれぞれ別々に予約するのが当たり前。
パック旅行を利用する層は「旅行慣れしていない初心者」だけになってしまいました。
追い討ちをかけるように、イギリスのEU離脱。
ポンドが下落して、飛行機を利用して国外に行くイギリス人旅行者が少なくなってしまいました。
このような原因が重なり、トーマスクックは約150年という歴史を終えました。
てるみくらぶ破産の原因
続いて、てるみくらぶ破産の原因を紹介。
- 広告費の圧迫?
- 時代の流れについていけなくなった
てるみくらぶ自体は、広告費の圧迫が破産の原因だと言っています。
しかし、これはちょっと違うんじゃないかなあ、というのが僕の考え。
てるみくらぶが格安でツアーを提供できた理由は「飛行機の空席とホテルの空き部屋を安く買い取るため」です。
しかし近年、航空会社業界では空席を嫌って旅客機の小型化が進んでいます。
つまり、購入できる空席が少ないため安く買い上げることができなくなったのです。
追い討ちをかけるようにLCCと民泊の台頭。
てるみくらぶのメインターゲットである若者層が、自分で旅行を手配した方が安く楽しいことに気が付いてしまったんです。
ターゲットをシニア層に切り替えようとしましたが、もう遅い。
シニア層の食指は動かず、破産してしまったというのが、てるみくらぶ転落の流れでしょう。
旅行代理店は自転車操業?
中小の旅行代理店は自転車操業になってしまう面もあります。
製造業だと「製品とお金を交換」というのが普通です。
しかし、旅行代理店は「前金をいただき、後から旅行させる」というスタイル。
実は旅行代理店が飛行機を予約するときは、お金を払わずに座席だけを確保できるからこれが成り立ってしまう。
Aさん、Bさん、Cさんがそれぞれ旅行したとしましょう。
Aさんの座席は、Bさんが支払った前金で支払われます。
Bさんの座席は、Cさんの前金で支払われます。
もし、Cさんの後に続く旅行者がいなかったら、Cさんの座席は誰が払うのでしょう。
誰もいないので、破産です。
大手ではこんなことはありませんが、中小の旅行代理店ではこのようなことが行われている可能性あり。
旅客機の小型化やLCCの台頭といった時代の流れは、旅行代理店には非常に厳しいものでしょう。
そもそも、お金を払ったのにどうして帰国難民になるの?
旅行代理店が倒産すると帰国難民になる理由はなぜでしょう。
予約の時点でツアーのお金は払ったし、席は予約してあるんじゃないの?という疑問も生まれます。
帰国難民になる理由は「旅行代理店の支払い能力がなくなったから」。
先に行ったように、旅行代理店は後払いで飛行機の座席の確保ができます。
しかし、旅行代理店がお金を払えないと分かったら、その座席はキャンセルになります。
お客さんは旅行代理店にお金を支払いましたが、航空会社にお金は行っていないんです。
こういう理由で、お金を支払ったけど座席がないという状況に陥るのです。

ただ、空席はあるので正規の運賃を払えば乗せてくれるかも。
でも、飛行機代の二重取りだし、そんな大金は払えない・・・。
旅行代理店を経由する危うさと対処方法
旅行代理店を利用するのって安全だと思われがちですが、危ないかもしれません。
何がキツいって、ツアーを申し込む人って旅行慣れしていない方が多いのですが、そんな人を「帰れません!ごめんね!」だけで海外の空港に置き去りにすること。
間違いなく、すんなりとは帰ってこれないです。
周りの日本人か、空港の日本語がわかるスタッフがいればいいですけど、いなければ助けを求めることもできません。
ということで、旅行代理店の倒産に巻き込まれないためのポイントを伝授します。
- JATAに加入しているところを選ぶ
- 大手の旅行代理店を利用する
- そもそも旅行代理店を利用しない
解説していきます。
JATAに加入しているところを選ぶ
JATAは日本旅行業協会という団体で、わかりやすく言うと旅行代理店の保険みたいなもの。
万が一倒産しても、弁済業務や旅行代金の一部返済などを行ってくれます。
なお、JATAに加入している代理店の一覧はJATAのHPから確認できますが、大手なら大抵加入していますね、

Travel Visionによると、HISは2019年4月にJATAの正会員から外れたけど、正会員と同等の扱いを受けられるらしい。
HISも安心の旅行代理店ってことだね。
大手の旅行代理店を利用する
旅行代理店はできるだけ大手を利用しましょう。
Travel Visionによると、旅行業は2018年だけで27件倒産しています。
この中には旅行代理店以外も含まれますが、結構多いですね。
トーマスクックのような大手が倒産することは非常に稀なので、大手を使った方が安心です。
そもそも旅行代理店を利用しない
僕のオススメはこれ。
飛行機やホテルを自分で手配すれば、旅行代理店の倒産に巻き込まれる可能性はゼロです。
ちょっと難しそうですが、慣れれば簡単です。
スカイスキャナーから航空券を、トリバゴから宿を予約すればオーケー。
それだけでとりあえず宿と足は確保できます。
まとめ:旅行業界は非常に苦しい状況です
トーマスクックの倒産の原因と、旅行業界の現状についてわかりましたか?
この記事でわかることは以下の3つでした。
- 旅行代理店が置かれている現状:非常に厳しい
- なぜ帰国難民になるのか:予約はしたがお金を払っていない
- 旅行代理店を経由する危うさ:倒産すると帰ってこれなくなる
旅行代理店は旅行慣れしていない方にとっては、非常に有効です。
しょっちゅう倒産しているものでもないですし、巻き込まれる可能性は非常に低いと言えます。
ただ、いざ倒産に巻き込まれたら、外国で「ごめんね、自力で帰ってきてね」という状況に陥るので、一発がでかいですね。
ぜひ、正しい旅行代理店を選んで安全安心な旅行を楽しんでください。

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